『王と少女の物語』-2

すっかりほったらかしにしていました。『王と少女の物語』の続きです。


医師達の力の、まるで及ばぬ有り様を見せつけられて王は、
裸足のままモスクへと駆け込んだ。
彼はモスクに入るとミフラーブに向き合い、そして祈った、
王の敷物は彼の涙で浸された。
やがて祈りは彼をその喜びの中へと解き放ち、
解き放たれて彼の唇から讃美の言葉が高らかに流れ出る、
「ああ、この広々とした大地ですらあなたにとってはわずかな施しである御方、
隠されたるものの全てについて一番良く御存知のあなたに、
今さら私が何を言うことがありましょうか?
どのような時にも、我らは常にあなたに庇護を求めます、
我らはまたしても道を見誤りました。
しかしあなたはこうも仰る、
『われは汝の秘密をすでに知っている、
だが汝の行いとしてそれを外側に知らしめよ』と」
彼の嘆願の声が、魂の奥底からやがて大きく響き出し、
その時恩寵の海は波打ち始めた。
泣いているうちに彼は眠りに捉えられ、
彼の夢に顕われた老人は言った、
「王よ、良い知らせじゃ!そなたの祈りは聞き届けられた。
明日になれば見知らぬ者がそなたを訪ねるであろう、
その者はわしよりの使いであることを知っておくが良い。
その者は熟練の腕を持つ医師としてそなたの許へ送られる。
安心してよい、信ずるに足る誠実で真摯な者じゃ、
彼の治療に絶対の魔法を見るがよい、
彼の性質に神の御力を知るがよい!」
約束に違わず時は過ぎて日付が変わり、
東より昇った太陽が星達を焼き焦がしつつあるころ、
王は見晴し台に立っていた、
そして不思議なかたちで示された「それ」の出現を、
今か今かと待ち受けていた。
彼はその人物がやってくるのを見た。
素晴らしい、の一言に尽きた。
遠くより表れたその男は影の中の太陽であった。
敬虔さがにじみ出ている。
すらりとして輝いているという点においては、まるで新月のよう。
男は現実の存在ではなかった、あるいはかたちを伴う幻想そのものだった。
そもそも幻想というものは、すなわち無にも等しいと考えられている。
だがそれでもなお、見よ、世界はまさに幻想に引きずられている!
彼らの平和も戦争も、一瞬にして入れ替わる幻想であり、
彼らの誇りも恥もまた、幻想から生まれ出たものに過ぎない。
だが聖者達の心を捉える罠として神が差し出す幻想とは、
疵ひとつない姿に整えられた、神の庭の反射そのものなのである。
さて、ここに登場する見知らぬ客人もまた、
まるで昨晩の夢の続きのごとく、あたかも幻想のように王の眼には映った。
そこで見えざる御方から使わされた客を出迎えようと、
門番達に替わって、王は自ら前に進んだ。

物語はまだまだ続きます。

『ルーミー詩撰』本館も、少しですが更新しています。遊んでいって下さい。