名著誕生シリーズ5巻『コーラン』

今読んでいるマナーキブの抜粋集は100章から成っています。前回までで10章まで読みました。区切りが良いのでちょっと脱線して、書籍の紹介です。

コーラン (名著誕生)

コーラン (名著誕生)

この一冊で、歴史、宗教、社会の全部を一通りおさらい出来ます。シリーズの全体は→こちらです(ポプラ社)

第三部「解釈の試行」の最終章で、「コーラン預言者ムハンマドの伝承に関するありとあらゆる知識を身につけた、敬虔なムスリム」ジャラールッディーン・ルーミーについて触れられていました。最後のところをちょっと抜粋してみます:


「ペルシア語のコーラン」に願いをかけることが真の教えであると言えるのだろうか?今やアナトリア(トルコ)だけでなく北米でも、「わが師」ルーミーに倣って旋回する者たちは多い。ルーミーはコニヤだけでなく南北カロライナ州でも人気がある。スーフィー行者だけでなく商業的に精神生活を喧伝する者にも人気がある。ディーパック・チョプラやデミ・ムーアやマドンナまでが、「旋回するデルヴィーシュ」への熱中ぶりを隠さない。二十一世紀に「わが師」ルーミーはまさにセレブたちのシンボルとなった。この人気がルーミーの元来の教えを汚し貶めるものなのかは、読者それぞれが、そして信仰者各人が決めることだろう。

「ペルシア語のコーラン」というのは「精神的マスナヴィー」を指します。抜粋していて、スーフィー「行者」を「ぎょうじゃ」と入力したつもりが、なぜかスーフィー「業者」と変換されてしまい、思わず吹き出しそうになりました。

マナーキブにも『シシリーの修験者達』というお話が出てきました。不安にコントロールされることなく、不安をコントロールすること、というお話でした。

「シシリーの修験者達」の一団は、時や場所に関係なく、姿かたちを変えて出没し続けます。今も昔も変わらないのは、彼らが他人様の心の中に小さな不安の種を植え付け、育て、それを栄養にするということです。

なんだか書籍の紹介から話が逸れてしまいました。

巻末に、塩野七生氏と本書の訳者である池内恵氏の対談が収録されており、それがとても良い解説になっています。