『シシリーの修験者達』

同じように、これはシェイフ・シナーヌッディーン・アッシャフリー・クラードゥズ ー 彼は分別があり、精神力も強い ー が語ったところによれば、それはマウラーナがダマスカスに向かう旅の途中での出来事だった。キャラバンがシシリーの町シスに到着しようという時のことだ。魔術を使う修験者の一団がそこに天幕を張っていた。彼らは見せ物小屋で魔術を披露したり、未来予知をして見せたりした。その他にも、あれこれを混ぜたり繋いだりして作ってあるという正体不明の魔法の品々を人々に売りつけた ー これは彼らに莫大な収入をもたらしていた。

彼らはキャラバンに加わっていたマウラーナに目をつけた。見せつけてやろうと考えたのだろう、彼らのうち少年の一人に、空中浮揚を命じた。マウラーナの目の前で、少年の体は宙に浮かんだ。

マウラーナは指一本その少年に触れていない。だが次の瞬間、少年の体は宙で一転し逆さまになってしまった。少年は恐怖のあまり泣き叫んだ。この状態で落下すれば、頭を地面に打ちつけて死ぬかもしれない。だが墜落死よりも、少年はマウラーナが恐ろしかった。マウラーナの思考には少年が潜り込む隙が全くなかった。少年はそのような経験をしたことがなかった。少年が今まで見てきた何ものとも違って、少年を圧倒した。

あわてた修験者達は、少年に降りてくるよう命じた。少年は言った:「できないよ、まるで体が釘付けにされたみたいな感じだ」修験者達が人々に売りつけてきた魔法の品々も彼らの呪文も、全く効き目がなかった。どのようにしても少年を地上に連れ戻せないと悟ったとき、修験者達は地面に頭をこすりつけるようにしてマウラーナに懇願した ー 少年を地上に連れ戻してほしい、無礼を許してほしい。マウラーナが答えて言うには、少年を操っているのは自分ではないこと、従って自分には少年を助けることは出来ないが、ひとつだけ方法があるということ ー 「神以外に神はなく、ムハンマドは神の御使いである」と少年が口にすれば良い。

「神以外に神はなく、ムハンマドは神の御使いである」少年が言うやいなや、その体は地上に戻された。それを見て修験者達も少年と同じ言葉を口にした。彼らはマウラーナに同行したがったが、マウラーナはそれを断り、彼らに彼らの場所に留まるように、そしてこれからは彼のために祈って欲しいと伝えた。

長い間、修験者達の物質的生活と精神的生活は二つに引き裂かれていたが、この時初めてひとつになった。世界がひとつの像を結んだところに、歩むべき新しい道が拓かれたのを修験者達は見た。修験者達はその道を歩み始めたが、それは彼らにとっても周囲にとっても善であった。彼らは彼らを束縛し続けてきたもの ー 受け継がれてきた土着的な世界、神々の気まぐれに翻弄される暗黒の世界 ー に別れを告げ、光にあふれた進歩的な世界を選び取ったのである。


『Manaqib al-Arifin』とは『聖人伝』の意です。ここで読んでいるのは、「アフラーキーのマナーキブ」と呼ばれるものです。ルーミーの幼年期から青年期のこと、生前に内輪の人々に向けて語った言葉や講義などを、ルーミーの孫であり弟子でもあったチェレビーの指示のもとに、やはりルーミーの弟子だったアフラーキーが書き記したものです。