『シャムスッディーンのヴィジョン』

ある夜、彼は胸苦しさを憶えて目覚めた。2、3度寝返りをしたが、心のつかえはそのままそこにあった。彼は思い切って声をあげてみた。すると涙が堰を切ったようにあふれてきたので、声をあげて泣いた。

泣きながら、彼は自分の悲しみの根源を探り当てようと、神秘家の目で自分の心の奥深くを観察した。悲しみは、正直な祈りの言葉となって彼の口から転げ出てきた。

「神よ、あなたが『これぞ』と思う聖者は一体どこにいる?どこに隠した? ー 私を連れて行ってくれ、あなたが愛する者の許へ」

すると「学者の王」と呼ばれた男 ー バルフの人バハーウッディーン ー の息子にまつわるヴィジョンが、シャムスッディーンの脳裏に浮かび上がった。「もっと見せてくれ、神よ」。シャムスッディーンは、その礼に犠牲を捧げることを神に誓った。犠牲とは自分の首のことで、なぜならシャムスッディーンにはそれ以外に何ひとつ持ち合わせがないのだった。

今度はヴィジョンではなく声が聞こえた。「ルームの地へ行け、汝の探し求めるものが見つかるだろう」。確信と揺るぎない愛に満ちて、シャムスッディーン・タブリーズィーはルームへ向かった。ある言い伝えによれば、彼はダマスカスからルームへ向かった。また別の言い伝えでは、彼は一度タブリーズに舞い戻り、それからルームを目指したという。


『Manaqib al-Arifin』とは『聖人列伝』の意です。ここで読んでいるのは、「アフラーキーのマナーキブ」と呼ばれるものです。ルーミーの幼年期から青年期のこと、生前に内輪の人々に向けて語った言葉や講義などを、ルーミーの孫であり弟子でもあったチェレビーの指示のもとに、やはりルーミーの弟子だったアフラーキーが書き記したものです。