『ジン達と燭台』


伝えられるところによると、マウラーナ達の住まう館には天井に届きそうなほどに高い燭台があった。日暮れ時になると、マウラーナはいつもこの燭台の傍らに立ち、夜も更けるまで聖バハーウッディーンの書き遺した数々の書物を読むのだった。

ある夜、この館に棲むジン達の一群がキラ・ハトゥンに訴えた。燭台の光のせいで、闇が館に訪れる隙もない。それは私達にとっては苦痛以外の何ものでもない。「望むと望まざるとに関わらず」、と、ジン達は言った。このままでは私達は、あなた方の一族に害を及ぼしてしまうかも知れない。

マウラーナの奥方 ー キラ・ハトゥンは、マウラーナにそのことを伝えた。マウラーナは黙ってキラ・ハトゥンの言葉に耳を傾けた。

それから三日後、マウラーナはキラ・ハトゥンに告げた。「何も心配することはない」 ー 館に棲むジン達は全てマウラーナの弟子となり、そのため一族や縁ある人々の全てに、危害を加える心配もなくなったのだ、ということだった。

『Manaqib al-Arifin』とは『聖人伝』の意です。ここで読んでいるのは、「アフラーキーのマナーキブ」と呼ばれるものです。ルーミーの幼年期から青年期のこと、生前に内輪の人々に向けて語った言葉や講義などを、ルーミーの孫であり弟子でもあったチェレビーの指示のもとに、やはりルーミーの弟子だったアフラーキーが書き記したものです。